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海外での洪水対策工事 2024年01月22日

近年、地球温暖化により世界的に異常な気候変動が深刻化してきています。
日本では、局所的な豪雨(ゲリラ豪雨)、突風、台風の巨大化、過去の記録を更新するような気温上昇、線状降水帯発生による河川の増水および堤防決壊など甚大な被害が発生しています。世界的に見ても干ばつ、温暖化による海水面の上昇、記録的な雨や台風による洪水被害が発生して多くの人命が奪われています。

日本政府は、ODA:Official Development Assistance(政府開発援助)を通じて海外の国々で災害対策を支援・援助しています。
その中の一つに今回取り上げる洪水対策があります。
日本でも洪水対策として、① 川幅を広げる拡張工事、② 川底を掘って水位を下げる浚渫工事、③ 新しく堤防を構築もしくは今ある堤防の高さを高くして水位の上昇に対処する河川改修工事、④ 曲がりくねった川の形を出来るだけ真っ直ぐにして水を流れやすくする河川改修工事などを行っています。
ODAの工事では、主に①、②、③の工事を行っており、河川の大きさ、河川流域の規模、緊急性などの条件を考慮して①~③を組み合わせて工事をしています。
ODAで支援・援助する国のほとんどが後進国・発展途上国といった国々です。自国で大規模な洪水対策を行いたいと思っても、資金も技術もなく毎年洪水による被害で多くの人命が奪われ甚大な被害が発生しています。そこで日本政府が技術と資金を支援・援助して洪水対策工事を通じて世界の人々の生活を守ろうとしています 。

私が従事する国では、特に大型台風の通過前後、河川の水位が急上昇し、想定していた最大水位を超え河川流域に洪水が発生します。
そのため、今回の洪水対策工事では基本計画を見直し、100年に一度来るような大洪水を防ぐための洪水対策工事としてコンクリート製の壁の製作・設置を行い、川幅をこれまでの2倍近くになるようにし、河川水位が過去最大になっても水があふれださないような計画にしました。また川底を掘って水深を深くして大量の水が流れてきても水位が上がりにくくする浚渫工事も行っています。
日本政府が推し進めるODA(今回の工事も含めて)では、現地の人たちに日本の技術を覚えてもらい、今後の自国の発展につなげてもらう“技術移転”も含まれています。日系建設会社が現地の人たちを雇用して、日本人技術者が現地の人たちにいちから建設技術を伝えていきます。この“技術移転”が一筋縄ではいかず苦労の日々が続きます。
まず、日本と当事国とは文化・歴史が違い、日本人が当たり前と思っていることはほとんど通用しません。それは仕事面だけでなく生活面においても同じことが言えます。まず、時間を守る、期日を守る、約束を守る、規律を守るといった日本人なら当然守るべき事項を彼らは守ることが出来ません。もとからそのような意識が備わっていないのです。従って全てが行き当たりばったり。彼らには時間軸というものを持ち合わせていないので、仕事に遅れようが来なかろうが気にしません。また、終わった時が約束の期限であり、いつまでにという約束が出来ません。つまり先を見越して準備や対策をするという文化・風習がないということです。そのため、資材が無くなって初めて日本人技術者へ報告があり、資材の注文をすることになります。これが日本人技術者を悩ます一番の原因で、資材が無くなってから注文をするので、資材が届く間、その箇所の工事が止まってしまいます。同じことがいくつもの場所で発生するので、工事がなかなか思い通りに進みません。

技術移転は、技術的な事だけにとどまりません。安全に対する知識も移転しようと努力しています。先述のように風習・文化が違うので日本人が思ってもみないような行動をすることがあります。この日本人が想像も出来ない行動を取った場合、事故に繋がる可能性が非常に高く、これまでの事故例をみても日本人では考えつかないような行動をして事故に繋がるものがほとんどです。
こうした事故を完全に防ぐことは出来ませんが、そのための努力が必要になります。私が心掛けているのはコミュニケーション(対話)です。お互いに言語が違うので主に英語でコミュニケーションを取るのですが最初はなかなかお互いに気持ちが通じ合わず伝えた事と違う事をしたりしてイライラしてしまうのですが、根気よく対話を続けるとそのうちお互いの言いたいことが理解できるようになります。そうなると現場もうまく行くようになります。工事が終わるころには友達のような関係になって作り上げた構造物をみんなで見てお互いを誉めあう時、現場の人間で良かったと思います。みなさんもぜひ、海外の現場でこのような経験をして欲しいと思います 。

【猿渡】